微笑みの向こうに、一人ひとりの物語。春日部の押絵羽子板
特産品,埼玉県,伝統産業,歴史,春日部押絵羽子板
邪気を跳ね除け、女児の健やかな成長を願う「押絵羽子板」。古くから正月の贈答品として根付き、そのきらびやかな表情は今も人々の暮らしに彩りを与えてくれます。
埼玉の匠
2019-12-13
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春日部の押絵羽子板|埼玉の匠
微笑みの向こうに、一人ひとりの物語。

春日部の押絵羽子板

邪気を跳ね除け、女児の健やかな成長を願う「押絵羽子板」。
古くから正月の贈答品として根付き、そのきらびやかな表情は今も人々の暮らしに彩りを与えてくれます。

7名の作家から始まった春日部の押絵羽子板

年の瀬が近づいた春日部のまち。駅のロータリーには、押絵羽子板を売る屋台が所狭しと立ち並び、訪れる人の多幸を祈っています。
羽子板の歴史は古く、時代は室町にまでさかのぼります。ある二組の男女が羽根つき勝負を行った記録が文献に残されており、それから、邪気を跳ね(羽根)除ける新年の縁起物として庶民の暮らしに定着していきました。現代のようなきらびやかな装飾が施されるようになったのは江戸文化が成熟した頃、人気歌舞伎役者や美人画を描いたのが始まりとされています。それから時代はさらに流れた昭和初期。太平洋戦争の戦禍を逃れるため、7名の押絵作家が東京から羽子板生地の生産地であった粕壁町へと疎開。これが「春日部の押絵羽子板」の始まりとなりました。春日部市には今もなお、多くの押絵羽子板工房がその技術を競い合っています。
7名の作家から始まった春日部の押絵羽子板
大切にしてきたのは真っ白な発想

大切にしてきたのは真っ白な発想

大切にしてきたのは真っ白な発想 今回ご紹介するのは、国内のみならず世界中の人たちに完全オーダーメイドの押絵羽子板をお届けしてきた「さか田」さん。代表を務める坂田宗觀さんは、もともとはストーブ会社に勤める会社員でした。当時、ストーブの転倒による住宅火災がたびたびニュースで取り上げられる中、若手社員でありながら自動消火装置を開発。これが特許を取得するほどの発明となり、社会や会社に大きな貢献を果たしました。そんなアイデアマンだった坂田さんは、結婚を機に奥様の実家を継ぐかたちで、縁もゆかりもなかった押絵羽子板の世界に飛び込むことになります。
「なんの知識も経験もなく、教えてくれる師匠もいなかったので、始めた頃はどこから手をつけていいか見当もつきませんでした。独学で押絵羽子板づくりを始めたものの、働いても働いてもほとんどお金にはなりませんでした」
当時、素人が押絵羽子板を始めたと周りの職人さんから笑われることもあったそうです。しかし坂田さんは、素人だから生まれる発想を大切にしようと、今までになかったアイデアを押絵羽子板に詰め込むようになります。テレビで小顔が流行すれば人形も小顔に仕上げ、より柔らかい印象にしたいと注文を受ければ羽子板の先を丸く削ってみました。色も形も装飾品も、その時代が求めるものを次々と取り入れていった「さか田」の押絵羽子板は、唯一無二の存在となり、いつからか業界の新しいスタンダートを築いていくようになります。
大切にしてきたのは真っ白な発想

伝統よりも今、目の前のお客様が望む最高の一品を

「私は20代の頃、伝統工芸の世界に飛び込んできたわけですけど、実は伝統工芸に携わっているという意識はまったくないんです。お客様一人ひとりが望むものを丁寧につくりあげていく。難しい要望があれば、何日も何十日も頭を捻らせて、新しいアイデアを生み出す。そしてそのたびに自分たちの技術が向上していく。ものづくりって、今も昔もその繰り返しだと思うんですよ」
伝統よりも今、目の前のお客様が望む最高の一品を
伝統よりも今、目の前のお客様が望む最高の一品を
「さか田」の工房には、坂田さんを押絵羽子板の世界に導いてくださった奥様、奥様の幼馴染、息子さん、娘さん、ものづくりを心から愛する人たちが集まり、一人ひとりのお客様が望む押絵羽子板を丁寧につくりあげています。

職人さん紹介

節句人形工芸士・チーフアドバイザー
坂田 花廳 さん
大好きだった母の羽子板への情熱を絶やすまいと、21歳の頃、当時まったくの素人だった主人とこの工房を継ぎました。困難だらけの道だったはずなのに振り返ってみれば、どれも楽しい思い出に変わっています。これからもお客様の幸せを願い、心を込めて押絵羽子板づくりに励んでまいります。
節句人形工芸士・チーフアドバイザー 坂田 花廳さん

節句人形工芸士
杉山 美智子 さん
40年前、幼馴染の花廳さんに誘われて押絵羽子板づくりを始めました。以来、お客様お一人お一人の幸せを願い、人形に命を吹き込んでいます。この仕事に就けたことを心から幸せに思っています。
節句人形工芸士 杉山 美智子さん
かすかべ押絵羽子板と特産品まつり
かすかべ押絵羽子板と特産品まつり
かすかべ押絵羽子板と特産品まつり
年の瀬に春日部駅東口にて開催されるお祭り。特産品の販売はもちろんのこと、羽子板職人の技の実演などが行われ、多くの人で賑わうとともに春日部の伝統産業を広めています。

さか田 会長・監修
坂田 宗觀 さん

45年前、未経験ながらに押絵羽子板の世界に飛び込み、温故知新の精神で独自性の高い羽子板ブランド「匠一好」を立ち上げる。以来、羽子板制作に励むかたわら、地域の子どもたちにものづくりの楽しさを教える活動にも注力している。

川口名匠会 七宝工 吉田 武さん 創作七宝 逸(いつ)|埼玉の匠
有限会社 さか田
TEL
所在地

埼玉県春日部市粕壁東1-23-27

埼玉県春日部市粕壁東1-23-27
HP http://www.takumi-ikko.com
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