七色の輝きを放つ、技と美の結晶。 七宝
特産品,埼玉県,伝統産業,歴史,七宝
金、銀、銅などの金属の上に釉薬を焼き付ける伝統工芸「七宝焼き」。花瓶や絵皿だけでなく、ブローチやイヤリングなどの装飾にもその技術が息づいています。
埼玉の匠
2019-09-30
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七宝|埼玉の匠 埼玉の匠
七色の輝きを放つ、技と美の結晶。

七宝しっぽう

金、銀、銅などの金属の上に釉薬を焼き付ける伝統工芸「七宝焼き」。
花瓶や絵皿だけでなく、ブローチやイヤリングなどの装飾にもその技術が息づいています。

悠久の歴史の中で紡がれてきた技と美

金・銀・瑠璃ルリ玻璃ハリ蝦蛄シャコ珊瑚サンゴ瑪瑙メノウの7つの宝物に匹敵する美しさを誇ることから、そう呼ばれてきた七宝。
紀元前1600年から前1200年の古代ギリシャ東南部、ミケーネ文明(青銅器文明)で栄えたキプロス島が発祥の地とされています(諸説あり)。
それからおよそ千年の時を経て、紀元前400年から前300年頃の弥生時代、インド、中国、朝鮮半島と経由して、青銅器、鉄器、仏教文化とともに日本に伝わってきました。
以来、日本で独自で進化を続けてきた七宝の技術。江戸時代後期には愛知県海部郡七宝町にて、中国に伝わる景泰藍(銅製の七宝焼き)の分析から今日の七宝焼きの基礎が確立されていきました。
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一瞬にして七宝の美に取りつかれた若き日の画家

物心つく頃から虫や花や木をスケッチして過ごしていた吉田さん。青年期には画家になることを志して、故郷新潟で教員生活を送っていました。子どもたちと自然の中で遊び、見つけた綺麗なものをスケッチしてみるととても喜ばれたそうです。その頃、故郷の美しい風景を描いた抽象画が、新潟県美術展にて最優秀賞を獲得。招待された東京都美術館で吉田さんはその後の人生をかけることになる七宝との出会いを果たします。
「会場の片隅に七宝焼きの花瓶が置いてあったんです。気づけば時間も忘れてずっと見惚れていました。私の心は一瞬にして七宝の美しさにとらわれてしまったんですね」
それから七宝づくりにすべての情熱を傾けるようになった吉田さん。16年の修行を積み、独立後はこれまでになかった工法や表現技法を模索し続けてきました。そうして生み出されてきた吉田さんの七宝は、国内外から高い評価を受けることになります。平成元年、ローマ法王・聖ヨハネパウロ2世に作品を贈呈。平成8年に三重県伊勢猿田彦神宮 御遷宮に際する七宝飾皿制作依嘱を受け、平成25年には埼玉県より彩の国の優秀技能者に選出。そして平成30年、厚生労働省より「現代の名工」の称号を授与されました。 七宝|埼玉の匠 七宝|埼玉の匠

今もなお、理想の一品を追い続ける現代の名工

七宝|埼玉の匠 「バブルの頃には結婚式の贈答品などの需要を受け、たくさんの職人が全国で七宝制作に励んでいました。しかし今、七宝を知る人自体が少なくなり、職人の数も全盛期の何分の一かに減少しています。後世に七宝の技と美を伝えていくためにも、私は私にできることをしようと考えてきました」
吉田さんは七宝を後世に残したいという想いを現実のものにするために、工程の簡素化と絵画性の向上を同時に実現する技法を考案。こうした姿勢が「彩の国の優秀技能者」「現代の名工」に選出された理由の一つになったそうです。
最後に改めて、吉田さんに自身の人生をかけて情熱を注いできた七宝の魅力についてお聞きしました。
「無限です。形も絵も色も技法も、まだまだ頭の中に描いたものをつくり切れてはいません。次はあれを試そう、ここを工夫しようという発想が無限に湧き出てくる。この歳になってもなお、そう思わせてくれるモノと出会えた私は幸せ者ですね」
埼玉県が誇る現代の名工は、今もなお理想の美を追い求め、七宝づくりに情熱を燃やしています。
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▲ 絵画的七宝表現に根ざした額絵、飾皿、ワインカップなど、伝統に基づく新しい七宝を独自に開発されてきました

川口名匠会 七宝工
吉田 武さん

昭和18年新潟県長岡市に生まれ、高校卒業後、油絵画家を目指し修行、以後七宝制作に従事。
近年、富岳・桜の魅力に惹かれ、七宝富士山シリーズ、薄墨桜シリーズに専念するかたわら、新人育成にも努めています。

川口名匠会 七宝工 吉田 武さん 創作七宝 逸(いつ)|埼玉の匠
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